2013年5月アーカイブ

ボローニャ歌劇場の"クレーリアの勝利"、全公演無事におわりました。


いまは同じ劇場で6月の"イタリア式離婚狂想曲"のリハーサル真っ最中です。


いろいろと、また落ち着いてレポートしたいと思います。


事前にきちんとお知らせができなかったのですが、


今週金曜日の朝9:20-10:00、


NHK-FMリサイタル・ノヴァが再放送されます。


よろしければ聴いてみてくださいね。


また書きます。



 藤木大地(カウンターテナー)
                 【支配人(司会)】本田聖嗣
                              
「小さな空」                  武満徹・作曲
                       (5分14秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ギター)大萩康司
                              
「歌曲集"冬の旅"D911から 第11曲"春の夢"」    
                      シューベルト作曲
                       (3分55秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ギター)大萩康司
                              
「"メリケの詩による歌曲"から 第12曲"世をのがれて"」 
                        ウォルフ作曲
                       (2分40秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ピアノ)河野紘子
                              
「"最後の7つの歌"から 第5曲"私はこの世に捨てられて"」
                        マーラー作曲
                       (5分40秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ピアノ)河野紘子
                              
「"8つの歌"作品10から 第1曲"献身"」        
                リヒャルト・シュトラウス作曲
                       (1分35秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ピアノ)河野紘子
                              
「荒城の月」                 滝廉太郎・作曲
                       (2分49秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ギター)大萩康司
                              
「黒田節」            福岡県民謡、細川俊夫・編曲
                       (4分33秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ギター)大萩康司
                              
「歌劇"クセルクセス"から ラルゴ"なつかしい木陰"」   
                        ヘンデル作曲
                       (2分46秒)
                (カウンターテナー)藤木大地
                     (ギター)大萩康司

2013年5月14日。

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ボローニャ歌劇場は1763年5月14日にオープンしました。
そのこけら落としのためにグルックが作曲し、250年前のきょう初演されたオペラ「クレーリアの勝利」に、Mannio役で出演します。
ボローニャ歌劇場の開場250周年記念公演です。
オペラの生まれた国イタリアで、日本人のオレが。
こんなに光栄なことは人生でなかなかないと思う。
2013年5月14日、いつもどおりベストを尽くします。


5月14日(火)20:00 ボローニャ歌劇場(イタリア)詳細
5月16日(木)20:00 同上
5月17日(金)20:00 同上
5月19日(日)15:30 同上
5月21日(火)18:00 同上
5月22日(水)20:00 同上

イタリアーナ。

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(メイク道具も役名で個人に用意されていて、楽屋でメイクしてもらえます。)

ゆうべ22:30にステージリハが終わったとき、
「あしたの朝は10:00から"イタリアーナ"ね」と言われた。
イタリアーナ(イタリア人女性)?とちょっと思ったが、
あまりに疲れていたので特に聞かなかった。
23時に手軽な店でピザとビールをおなかに入れてゆうべは帰った。

きょうの午後から夜は、
衣装メイクつきのステージランスルー(通し稽古)なのはわかっていたので、
あぁ、きっとイタリア語の発音の最終確認ね、と思って、
体力温存のためにけさリハ開始5分前に劇場に行った。
そしたらオケピットにオケがいて、
ステージの上にソリスト用にイスが6つおいてあった。
楽屋では同僚が本気で発声練習していた。
"イタリアーナ"は、オケ合わせのことだった。
きょうの午前は温存のつもりだからおれは発声練習なんかしていない。
ゆうべ遅くまでのリハでなかなか寝つけず、ぎりぎりまで寝ていたので、
朝メシも食べなかった。
客席には芸術監督。
"おれのキャリア、まだ始まってないのにもう終わった"と思ったが、
平静を装い、指揮者にリハの曲の順番を確認して
自分の番がこない間に楽屋で発声練習して、
スピーカーで呼び出されないかどきどきしながら、
食堂でのどを通らないクロワッサンを食べた。
そしたらオケ合わせ、おれのアリアまで順番がまわってこなかった

そんなのおかまいなしに明日はオケ付ステージリハだ。
あさってはゲネプロだ。
これがイタリアのやり方なら、
いくら慣れていなくてもそのとおりにやるべきだと思うんだよね。
オペラはこの国で生まれたんだから。

(5月10日、ボローニャ)

ドラマオペラハウス。

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リハをずっと見学しているギリシャ人同僚歌手のこどもたち。


お絵描きをしていたので、何を描いてるの?ときいたら、


「ぼくの結婚式だよ」


彼らはこれから公演が続くママより先にあしたギリシャに帰る。


別れ際に、


「これでお別れだけど、公演の成功をいのってるよ」


と上手な英語で言ってくれた14歳の彼。


またどこかで会えるといいな。


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初日にむけてスケジュールが進んでいくと、


衣装合わせやら、楽屋のことやら、記者会見やら、


オンステージ以外で劇場スタッフと接することも増えてくる。


衣装のおねえさんたちは、ぼくのサイズをピャッと計ってくれて、


「いいわ、素敵だわ、このラインすきだわ、満足だわ」


とぼくのためだけに新しく衣装を生地から縫ってくれて、


舞台できれいに見えるように衣装を何度も合わせてくれる。


なぜかボディタッチの多い靴のおっちゃんは、ぼくが


「ほかの歌手の背がみんなおおきいからさー」


とポロっとこぼすと、


「まかせろ、おまえが大きく見えるようにヒールを足すし、きれいに塗るし、


舞台で動きやすいように柔らかい中敷も入れるから」


「おまえは決して小さくないんだぞ、


デカイ歌手だって、自分をもっとデカく見せたがるんだ」


何度も日本公演に行っている大道具のおっちゃんは、


ぼくが出番を待って舞台袖に座っていると、


「しなガーワー、しブーヤー」とわざわざ現れ、


「おまえ日本人にしちゃ割とかっこいいな」(どうもありがとう)


オペラは、生身の人間の仕事だ。


それぞれの人生を持つ、いろんな人間の想いが集まって、客席に届くのだ。


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おれはずいぶんラッキーでハッピーな人間だ。


仲間と。


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目と目でつうじあう。

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ボローニャ歌劇場・開場250周年記念公演「クレーリアの勝利」、


公演初日まであと一週間。


名古屋から東京、ウィーン経由でリハに合流した、


スーパーハードな最初の一週間をなんとか乗り切りました。


オペラの「本場」、イタリアのオペラハウスでの仕事たのしいです。とても。


相撲の「本場」、日本でプレイするイタリア人力士の気分です。たぶん。



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このオペラにはメインキャスト(ソリストの歌手)は6人いて、


イタリア人1人、ギリシャ人3人、トルコ人1人、日本人1人(おれ)です。


指揮者はイタリア人、演出家はイギリス人。


この現場で使っている言語はイタリア語と英語。


オペラなので、なんていうのかな、わかりやすくいうと


うた(アリア)以外に、


セリフ(イタリア語)のやりとり(レチタティーヴォ)があるのですが、


メインキャストの全員がイタリア語をきちんと話すことができると、


全員にとっていわゆる「暗記した」言葉ではないわけなので、


言葉のキャッチボールでドラマを創れる。


そのレベルでドラマを創れると、


舞台の上で、何も言葉を発していない状況での演技だとしても、


お互いの目と目が合ったとき、


相手のその目の裏に隠れている感情をかんじとって、演じることができる。


オペラの舞台でなされていることは「演技」だけど、


仕事の現場がその境地にいくことができていると、


ぼくにはその中で演技をしている感覚はもうありません。


ドラマの中で、その人物として、感情を持って、


ほかの人物たちと音楽にのせたドラマを創っているだけ。


だから楽しい。


ドラマの進行上、楽譜のどこで舞台でどう動くかは演出家が決めるけれど、


こう歩け、手足をこう動かせと振り付けをされるわけではない。


だから生身の人間としてリアルに舞台の上に存在できる。


ぼくはカウンターテナーになってからオペラに出るのははじめてで、


テノール時代を思い出すと多分この3-4年はオペラはやってないと思うんだけど、


ぜんぜん大丈夫。イタリアでも大丈夫。


やっぱりオペラの基礎を初めからアメリカ式(海外式)で学んだからだと思う。


そしてそのあとすぐ仕事の現場に放り込んでもらえたからだと思う。


どちらも東京の新国立劇場でね。


オペラ、たのしいね、がリハ第1週の感想。


今年はボローニャでもうひと作品、東京でひと作品オペラにでます。


どの作品でも、その人物として舞台に存在したいとおもいます。


相手役のブルジュ(トルコ人)と。


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このプロダクション(この作品でこの演出)は、


アテネとロンドンでもう上演されていて、


今回新しく入れ替わったキャストはイタリア人の主役とぼくのふたりだけ。


ほかの4人はもうやっている。


だから前回公演のDVDをボローニャに着いた日に渡されて、


空き時間に自分がどのタイミングでなにをしないといけないのか予習して


時間の限られたリハに臨まないといけない状況だったのだけれど、


一週間の最後のコマでオペラ全部を最初から最後まで通し終わったとき、


同僚たちが、ぼくらふたりをねぎらってくれた。


「この作品はじめてだったのに、よくついてきたね」と。


最初にぼくの声をきいて、同僚たちが「おめでとう」と言ってくれた。


指揮者も演出家も「おまえが来てくれてハッピーだ」と言ってくれた。


仲間になれたんだな、と思ってます。

おかえりボローニャへ。

リハーサル進行中。


たとえばきょう。


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午前中、音楽リハーサル。(指揮者と)


2May13prove.jpg

午後、ステージングリハーサル。(演出家、指揮者と)


午後にリハしたここは、舞台の真裏のスペースなんだけど、


つまりちらっと仕切りの向こうをのぞいてみたらこういう景色。


2May13teatro.jpg

はじめて表舞台を使ってこの景色をみながらリハーサルをする日、


たぶんちょっと泣くと思う。


ボローニャの親友たちにも会えてます。


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みんながぼくに、おかえりボローニャへ、と言ってくれるんだ。


ああ、帰ってきたんだなあ。

*『藤木大地』オフィシャルHP

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カウンターテナー歌手。
2012年、日本音楽コンクール第1位。カウンターテナーとして史上初の優勝者となり、大きな話題となった。13年にボローニャ歌劇場にデビュー。14年、15年には N H K ニューイヤーオペラコンサートに2年連続出演し、さらにはウィーン国立歌劇場と14/15シーズンの客演契約を結ぶなど、国際的な活動を展開する、現在最も注目を集めるアーティストのひとりである。東京藝術大学卒業。新国立劇場オペラ研修所修了。新国立劇場にテノールとしてデビュー後、ボローニャ、ウィーンに留学。11年にカウンターテナーに転向。12年国際ハンス・ガボア・ベルヴェデーレ声楽コンクール世界大会にてハンス・ガボア賞を受賞。宮崎市出身。ウィーン在住。
所属事務所による公式プロフィールはコチラ


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